Hadoop(Apache Hadoop)とは、膨大なデータを複数のコンピュータに分散して効率的に保存・処理するためのオープンソースの分散処理フレームワークです。安価なマシンを組み合わせたクラスタ構成で動作し、テラバイトやペタバイト規模のビッグデータを高速かつ安全に処理できる基盤として、AIの学習データ管理や大規模ログ分析に広く活用されています。
Hadoopとは
Hadoopは、ペタバイト級の大規模なデータを複数のサーバーに分散して保存し、それらを並列で高速に処理するためのオープンソースソフトウェア(OSS)のフレームワークです。
詳しく解説
Hadoopは、主に「HDFS(Hadoop Distributed File System)」と呼ばれる分散ファイルシステムと、「MapReduce」と呼ばれる並列処理エンジンの2つのコア技術で構成されています。従来のデータベースシステムでは1台の高性能なサーバーに依存していましたが、Hadoopは一般的な仕様のサーバー(コモディティハードウェア)を複数台接続してクラスタを構築し、スケールアウト(台数を増やすこと)によって処理能力や容量を柔軟に拡張できます。また、一部のサーバーが故障しても他のサーバーが処理を引き継ぐ「フォルトトレランス(耐障害性)」を備えている点が特徴です。近年では、Hadoopクラスタ上でリソース管理を行う「YARN」や、分散処理を高速化する周辺エコシステムと組み合わせて利用されます。AIモデルの学習に必要となる大量のテキスト、画像、ログデータなどのビッグデータを蓄積し、前処理を行うデータレイクの基盤として極めて重要な役割を担っています。
具体例・使われ方
具体的な利用例としては、Webサイトの膨大なアクセスログの分析や、センサーデータのリアルタイムではない一括処理(バッチ処理)が挙げられます。例えば、ECサイトで数千万人のユーザー行動ログを蓄積・解析してパーソナライズされた推薦アルゴリズムの学習データを作成する際、Hadoop上に格納されたデータをMapReduceで集計・変換します。また、金融機関における不正取引検知の過去データ分析や、気象データの長期的な推移予測モデルの構築に必要な大規模データのストレージとしても利用されます。
似た用語との違い
Hadoopとよく混同される技術に「Apache Spark」と「RDBMS」があります。Hadoopがデータをハードディスク(ストレージ)に書き込みながら処理するバッチ処理向けのシステムであるのに対し、Apache Sparkはデータをメモリ上で処理する(インメモリ処理)ため、より高速に動作し、機械学習の反復計算に適しています。現在ではHadoopのHDFS上にApache Sparkを載せて連携させるケースが多いです。また、RDBMS(関係データベース)は構造化されたデータを厳密に管理し、リアルタイムのトランザクション処理を得意としますが、テラバイト規模を超える非構造化データの並列処理やスケーラビリティにおいてはHadoopの方が圧倒的に優れています。
注意点
Hadoopを導入・運用する際にはいくつかの注意点があります。第一に、Hadoopは大量のデータをまとめて処理するバッチ処理に特化しているため、ミリ秒単位の応答が求められるリアルタイム処理や、データの頻繁な追加・更新には向いていません。第二に、複雑な分散環境を管理・保守するためには、高度なインフラ知識や運用スキルが必要となります。近年では、オンプレミスで自社構築する代わりに、AWSのAmazon EMRやGoogle CloudのDataprocといった、クラウド上で動作するマネージドサービスを利用してHadoop/Apache Spark環境を立ち上げ、管理コストを削減する手法が一般的になっています。