隠れマルコフモデル(HMM)は、観測できない隠れた状態の推移と、その状態から確率的に発生する観測データの関係をモデル化した統計的確率モデルです。時系列データやシーケンスデータの解析に適しており、音声認識や自然言語処理などの分野で長年にわたり幅広く活用されています。
隠れマルコフモデルとは
隠れマルコフモデルとは、外部から直接観察できない「隠れた状態」の変化と、その状態から確率的に出力される「観測データ」の振る舞いを記述する確率モデルです。
詳しく解説
隠れマルコフモデルは、システムの状態変化が過去の履歴ではなく直前の状態のみに依存するというマルコフ過程を基礎としています。モデルは「状態遷移確率」と「出力確率」の2種類の確率で構成されます。蓄積された観測データから最も確からしい隠れた状態の系列を推定するビタビアルゴリズムや、モデルの確率パラメータを自動学習するバウム・ウェルチアルゴリズムなどの計算手法が確立されています。深層学習が台頭する以前の時系列解析において極めて重要な役割を果たしてきました。
具体例・使われ方
具体的な応用例として、音声認識では「発声された音素」という隠れた状態から「音声信号」が観測される過程をモデル化します。また、自然言語処理の形態素解析では、「文章中の品詞」という隠れた状態から「実際の単語」が出力される流れを推定します。さらに、生物情報科学におけるゲノム配列のパターン特定にも活用されています。
似た用語との違い
通常のマルコフモデルはすべての状態を直接観測できるのに対し、隠れマルコフモデルは内部の状態が外部から見えない点が異なります。また、同じ系列データの分類に使われる条件付き確率場がデータのラベル付けに特化した識別モデルであるのに対し、隠れマルコフモデルはデータ全体の発生確率を記述する生成モデルに分類されるという違いがあります。
注意点
隠れマルコフモデルは直前の状態のみに依存するという強い仮定を置いているため、長期間にわたる複雑な依存関係を持つ時系列データの表現には限界があります。そのため、現代の高度な言語処理や音声処理では、より長距離のコンテキストを扱えるRNNやTransformerといった深層学習を用いたモデルに置き換わる傾向があります。