並列処理とは、コンピュータにおいて複数の計算を同時に実行する技術です。AIやディープラーニングの分野では、膨大な数のパラメータを持つニューラルネットワークの学習や推論を高速化するために、GPUなどのマルチコアプロセッサを用いた並列処理が不可欠となっています。限られた時間で大量のデータを処理するための基盤技術です。
並列処理とは
並列処理とは、1つの大きな処理タスクを複数の小さなタスクに分割し、複数の処理装置(マルチコアプロセッサやGPUなど)を用いて同時に実行することで、全体の処理時間を短縮する計算手法のことです。
詳しく解説
近年のAI、特にディープラーニングの急速な発展は、ハードウェアによる並列処理技術の向上に支えられています。ディープラーニングモデル(ニューラルネットワーク)の学習では、数百万から数千億個ものパラメータに対して行列演算を繰り返す必要があります。これらの演算は互いに独立している部分が多く、並列化が非常に容易であるという特徴(データ並列性)を持っています。そこで、数千の演算コアを持つGPUを並列に動作させることで、従来のCPUによる処理と比較して劇的な高速化を実現しています。また、より大規模なモデルの学習においては、単一のコンピュータ内だけでなく、複数のサーバーをネットワークで接続した分散処理も組み合わせて実行されます。
具体例・使われ方
並列処理の代表的な例は、GPUを用いた画像認識モデルや大規模言語モデル(LLM)の学習です。画像をピクセル単位で分割して同時に畳み込み演算を行う処理や、テキストデータを一括して処理するTransformerの自己アテンション機構などで並列処理が活用されています。また、大量のテストデータに対する推論を並行して実行するバッチ処理も並列処理の一種です。
似た用語との違い
並列処理と混同されやすい概念に逐次処理と分散処理があります。逐次処理は、1つのタスクを順番に1つずつ実行する方式であり、並列処理とは対極の概念です。分散処理は、ネットワークを介して物理的に異なる複数のコンピュータ(ノード)に処理を分散させて実行する仕組みを指します。並列処理は単一のコンピュータ内のマルチコアプロセッサなどで同時に処理を行う場合を指すことが多く、分散処理は並列処理の概念をネットワーク規模に拡張したものと言えます。
注意点
すべての処理が並列化できるわけではありません。アムダールの法則が示すように、プログラムの中に並列化できない部分(逐次処理が必要な部分)が少しでも残っていると、プロセッサ数を増やしても全体の処理速度向上は頭打ちになります。また、並列処理を行うためのデータ転送ボトルネックや、複数のスレッド間でデータの競合が発生する同期問題への対策が必要となり、プログラムの設計やデバッグが複雑になるという課題もあります。