逆行列とは、ある行列にかけることで単位行列を作り出す特別な行列のことです。機械学習や深層学習において、連立一次方程式を解く際や、線形回帰のパラメータを解析的に算出する計算プロセスなどで広く活用されています。
逆行列とは
逆行列とは、元の行列と掛け合わせることで、数における「逆数(かけたら1になる数)」のような役割を果たす行列のことです。
詳しく解説
数学の線形代数における基本的な概念であり、正方行列に対してのみ定義されます。行列Aに対し、掛け合わせると単位行列Eになる行列をAの逆行列と呼び、通常はAのマイナス1乗の形で表します。AIや機械学習の分野では、データをベクトルや行列として扱うため、連立一次方程式を解く場面や、特徴量から最適な重みパラメータを直接計算する解析解(正規方程式)を求める際に不可欠な計算要素となります。
具体例・使われ方
例えば、複数の入力変数から特定の目的変数を予測する線形回帰モデルにおいて、最小二乗法を用いて最適な重みを一意に決定する計算の内部で逆行列が使われます。また、主成分分析(PCA)のようなデータ圧縮や次元削減のアルゴリズムでも、固有値分解や行列演算の過程で利用されています。
似た用語との違い
通常の数における除算とは異なり、行列には割り算という直接的な演算がありません。そのため、割り算の代わりに逆行列を掛けることで対応しようとしますが、すべての行列に逆行列が存在するわけではない点が通常の数値演算との大きな違いです。
注意点
すべての正方行列に逆行列が存在するわけではなく、行列式がゼロになるような行列は「正則でない(特異行列)」と呼ばれ、逆行列が存在しません。また、コンピュータによる浮動小数点演算では、逆行列を直接計算すると数値的不安定性(丸め誤差の拡大)を引き起こしやすいため、実際の機械学習の実装では逆行列を直接求めずにLU分解やQR分解、あるいは最適化手法を用いることが推奨されます。